現場目線の協力会社管理とは〜管理業務が変わる10のストーリー~

元アミックスの賃貸管理部門責任者で、管理業務改革とデジタル 化を推進、2022年7月に、賃貸不動産管理業のあり方をPMの観点から研究し実践するという目的を掲げ、 株式会社PMラボを設立された深澤成嘉さんと、当社代表近藤が「管理業務を変える」をテーマにこれからの賃貸管理に重要ないくつかのトピックについてお話しするシリーズ第一弾!

今回のテーマは「協力会社管理」です。

※深澤さんと近藤のプロフィール詳細はこちらからご覧ください。

協力会社管理の今

近藤

建設業の場合ですと二次請け、三次請けなどの多層構造になっています。

建設の現場は許認可であったり、国交省の労務管理の基準があるので、協力会社の管理という視点において建設業界はやや進んでいるんです。

一方、不動産管理やそこにおける建物管理やメンテナンスということを考えたときに、まず賃貸住宅管理業法が整っていない。もちろん、個々の法定点検は法令に基づいて行われるのですが、例えば賃貸住宅においては「清掃を月何回実施しなければならないのか」といった基準がないんですよね。

このような、賃貸住宅の建物メンテナンスを規定している賃貸住宅管理業法が整っていないという状況の中で、緊急駆け付けや共用部の清掃・点検、専有部の工事など、さまざまな業務の協力会社とのやりとりをトータルで管理する必要があります。

実際、基準がないため勝手に行える部分でもあるのですが、その状況下だからこそ、二次請け、三次請けなどの構造である『建物メンテナンスの”品質”を高めるだけでなく、協力会社のネットワークおよび労務管理を含めた”品質”を如何に担保していくか』という発想が重要です。

建物メンテナンスにおいて品質管理のスタンダードを提示する

近藤

賃貸住宅の建物メンテナンスにおいては、法律がなく勝手にできるがゆえに、協力会社をどう労務管理、品質管理するかという発想自体がありませんでした。

例えば清掃一つをとっても、巡回清掃、定期清掃、日常清掃など、そもそもの言葉の定義がバラバラであり、場当たり的になんとか現場を回していたというのが現状だったんですね。

建物メンテナンスとはどうあるべきかを考えた時に

・どういう建物メンテナンスの品質管理が必要か

・日常の業務執行をどうするのか

といった、建物メンテナンスの品質管理に関するスタンダードを作っていく必要があると思うんです。

そういったスタンダードを作っていかないと、多くのBM会社では協力会社の管理、そこにおける業務フローの標準化とか、報告品質の標準化など、こういったものがなかなかできていかないのではないかと思います。

現場の中で学びながら作った「BMクラウド」

近藤:

「BMクラウド」は、元々システム開発をしていた弊社が、実際に一都三県で約70名の自社のワーカーを採用し自社で清掃等の建物管理業務を行うことで、品質管理はこうあるべきではないか、スケジュール管理はこういう風にすべきではないか、報告のアウトプットはこうするべきなど、現場の中で学びながら作ってきたシステムです。

管理物件数が一万棟近くになり、現場での経験値をシステム化し、現場の声をそのままシステムにフィードバックしてきたBMクラウドを、他社にご提案できる状況になってきたと思っています。自社で培ってきたノウハウを提供することで、建物メンテナンスにおいて品質管理のスタンダードを提示できればと考えます。

現場の職人さんの目線まで落とし込んだシステム開発に感銘

深澤:

システム開発から始まり、その汎用性を高めるために自ら自社で清掃等の建物管理業務を開始し、専門のスタッフを雇用し、その現場からのノウハウをフィードバックしてシステムに落とし込んでいるという点に大変感銘を受けました。

管理会社、オーナー向けのシステムは多くあります。しかし、工務店、職人、分離発注の職人の管理、労務管理、受発注管理といった事務作業とオペレーションなどの、実際に現場にある煩雑な業務を補うシステムはありませんでした。そのため、salesforce(セールスフォース)やkintone(キントーン)などのサービスを組み合わせて活用しようとするものの、職人さんには使いにくい。コスト面も含めて業務に関わる各人のリテラシーの違いが、システムをうまく使っていくための障壁になるという点が考慮されていないことが多いのです。

今回、近藤社長からBMクラウドのシステム開発のビジョンを聞かせていただき、管理会社で実務に携わりながらこんなシステムがあればと長年思っていたことが実現できると感じています。細かいディテールまで作りこまれたシステムは、知れば知るほど本当にすごいの一言です。

DXは現場ワーカーに届けることが本質的な価値

近藤:

ブラジルのセバスチャン・サルガド(SEBASTIAO・SALGADO)の『WORKERES』(1993年刊行)という写真集があって、世界中のさまざまな現場でさまざまなワークをしている人々の姿が美しい写真で収められています。

プロダクト開発においては、この『WORKERS』に掲載されている、例えば、シチリアの漁師を思い浮かべながら、現場に本当に必要な「利便性」とは何かを考えています。

Power to the Peopleの視点で、私たちが提供するBMクラウドの価値をどのように届けていけるのか。もっともっと現場ワーカーの視点でインターネットの利便性をひとりひとりのワーカーさんに届けるのが私たちのプロダクトのビジョンです。

DXが進むことでホワイトカラーの仕事が楽になるのは容易に想像できますが、現場の職人さんはクラウドサービスを使いこなして確定申告できるでしょうか?

インターネットの利便性について考える際には、もっと現場目線にし、ワーカーさんにどう届けることができるかを第一の視点としています。それを起点としたもう一つの視点が、アナログなワークをどう仕組み化するのかというものです。

DXによって、生産性が上がる、利益が上がる、直行直帰ができるなどの価値が分配されますが、この視点がない限り、新しいDXの価値は享受されないのではないでしょうか。

私はDX推進において、相互に評価しながら価値循環をしていくオープンイノベーションによって、業務それぞれのワークの仕組み化を進めていければと思っています。「我々が培ったノウハウを九州の内装業者が使えるのか?」といった発想でやっていかないとインターネットがもたらす現場ワークに対する良循環が生まれません。

このような背景から開発したBMクラウドを、職人、BM会社、管理会社、オーナーなど、関わる人たちみんながハッピーになれるような共存共創のプラットフォームとして提供していきたいと考えています。

ワーク管理の仕組みづくりは ”新しい管理の視点”が重要

深澤:

2017年から株式会社アミックスで賃貸事業本部長として賃貸管理業務に尽力していた際に、日本で初めてとなる媒介契約による電子契約を実施しました。

私自身が最初に電子契約の可能性を考えたのは、電子契約の本質が紙や郵送といった物理的なものから、契約書をPDFデータに置き換えWEBシステムを介することで契約業務に係る時間を超越できる存在になると思ったからです。電話やファックス、郵送などは業務のスピード感を阻害します。にもかかわらず不動産業界は電話とFAX、郵送がいまだにコミュニケーション手段の中心にあり、デジタル化が進まない原因となっています。しかし今やあらゆる商品、サービスの顧客対応はWEBからのチャットが当たり前になり、電話番号を見かけたとしてもナビダイヤルで実質有料です。顧客対応を電話からチャットに移行することで、人員に係るコストを最適化する方向にあります。

今やスマートフォンを老若男女問わず持っていることが当たり前となり、PCがなくてもスマホ1台あれば全ての業務が場所や時間を問わずできる、というところまできました。ようやくスマホというデバイスが携帯電話という使い道から、画像も含めたデータ通信の手段として認識され、職人さんや入居者、オーナーなど関係するみんなが使えるようになってきたのではないでしょうか。そうなった今、実現したかった世界観がすぐそこにあるように思います。

近藤:

徐々に普及してきたスマホも当たり前という状況の中でツールもさることながら、そこを通じてどういう世界観を共有できるかっていうところがこれから大事なのかな。

深澤:

業務管理一つとっても、マネジメントにシステムを使うことで「効率的に管理ができる」「一人ひとりの仕事の分量が管理できる」「オーバーワークもなくなる」というように変わっていくことができると思います。

近藤:

現場ワーカー目線でワーク管理の仕組みを作っていく。まずは、管理会社にとっては、何十社とバラバラだったメンテナンスの協力会社を管理するといった、新しい視点を持つことが大事です。

さらに協力会社を管理していく中で、ペーパーレス、インボイス、請求をまとめる等、ニーズに合わせた機能を追加していきたいと思っています。